2017年6月28日水曜日

オオイヌノフグリとジャガイモのアブラムシ


ジャガイモ畑でアブラムシを探すのを忘れていました。と言うより、ジャガイモの葉をくまなく見て昆虫を探しましたので、アブラムシによる被害があれば気づいたように思います。普通は、葉の裏などを注意深く見れば、ワタアブラムシやジャガイモヒゲナガアブラムシがすぐ見つかるようなので、注意力が足りなかったのかも知れません。

テントウムシは成虫が越冬することで有名ですが、アブラムシはどうでしょうか。調べてみると宇都宮周辺では受精卵での越冬と成虫での越冬が確認されているようです1)。岩手は宇都宮よりも寒いので、宇都宮周辺よりは受精卵での越冬が多いものと思います。

では、受精卵はどこで冬を越すのでしょうか。アブラムシの受精卵は、樹木や灌木の枝や多年生の雑草の葉、茎などで確認されていますが、受精卵が孵化して幼虫になった際には、餌となる師管液が必要になります。そこで、寄主の樹木や雑草の芽が出る時期に合わせて受精卵は孵化し、幼虫は新芽に移動するようです。もっとも、過酷な環境なので卵の孵化率は悪いようです。

ジャガイモを寄主とするワタアブラムシの場合は、ムクゲの枝や雑草のアカネの株本に受精卵があり、そこで孵化するようです。一方、雌成虫はイヌノフグリ類やオオバコ、ペンペン草など多年生雑草の古葉や基部に潜み冬を越し、3月新芽が出始めると増殖を開始し、4月には有翅虫が出現してヤブガラシやカラスノエンドウ、ボケ、ハキダメギクなどに移動し、畑では5月頃からジャガイモが植えられるので、そこに飛来し増殖することになります。

タバコ葉にもアブラムシによる被害があり、そのためタバコ畑へのアブラムシ飛来急増期の予測式が、2002年にJT葉タバコ研究所によって、岡山と盛岡を例として作成されています。実際は、アブラムシが運ぶキュウリモザイクウイルス病が恐れられていて、その多発の予防に向けた取り組みだったようです。盛岡では、厳寒期を過ぎたとき(31日)から日平均気温を足し、760℃に達する日がアブラムシの飛来急増期になるということです。でも2002年以降、気候変動が激しいので予測式は修正されているかも知れません。いずれにしても、平均気温と雨量が関係するそうです。

東北の春は、オオイヌノフグリの花とともに始まりますので、心待ちにしていましたが、イヌノフグリ類がワタアブラムシの寄主として利用され、そこを拠点としてワタアブラムシがジャガイモ畑などに広まっていくとは思ってもいませんでした。ヤブガラシは見かけるたびに除去したいと思い、オオバコやペンペン草は将に雑草そのものという意識で見ていましたが、それぞれが自然の中では様々な側面を持っているようで、驚かされます。 

アブラムシの害を防ぐには、春早くこれらの雑草を取り去ることが大事ということになります。でも、アブラムシや雑草は人間活動の妨げになることから、悪者扱いされているだけで、自然の中ではそれぞれ等しく尊い存在です。

 参考
1)稲泉 三丸:日本応動昆虫誌、14(1)、29(1970)

0 件のコメント:

コメントを投稿