変異型ウイルスの増加等もあり、新型コロナウイルスの第4波が懸念されています。インドやバングラディッシュでは感染者数が急増しているようです。
日本もまだワクチン接種があまり進んでいないので心配です。
世界的に医薬品開発が活発に行われているものと思われますので、その早期の実用化を期待していますが、最近は植物由来成分(ファイトケミカルズ)の有効性に関する情報を良く見かけるようになりました。
医薬品開発のターゲットとしては、新型コロナウイルスのRNA鎖に由来する機能タンパク質としてのRNAポリメラーゼ(NSP12)やメインプロテアーゼ(NSP5)等の酵素類やヒト細胞と結合するスパイクタンパク質(ORF2)などを上げることができるように思います1)。
この中で、特にメインプロテアーゼ(Mpro、3CLpro)に対するファイトケミカルズの活性阻害作用が興味を持たれているようです。
RNAウイルスのメインプロテアーゼの活性阻害物質については、サーズ(SARS)やマーズ(MERS)について多くの報告があり、分子ドッキング法を用いた予測であっても、論文ごとに結果が異なるものもあるので、ヒト試験で結果が出るまでは、確定ということにはならないのですが、2021年3月に発行された学術誌「Molecule」に掲載された論文2)では、大腸菌で生産した新型コロナウイルスのMproを精製し、試験管内での阻害試験結果を報告していたので、大変興味を持ちました。
それによると、タンニン酸に強い活性が認められていますが、この化合物は非特異的にタンパク質と結合する物質であり、かつ高分子なので除外し、次いでプエラリン(クズの根に存在)、ミリセチン、ダイゼイン、ケルセチン、レスベラトロールの順になっていました。
コンピュータを用いた分子ドッキング法と異なり、被験物質数が少ないので他の類似化合物に阻害作用が無いということにはならないのですが、日本で良く摂取されている大豆に多く含有されるダイゼインも阻害活性が高い結果になっているので驚きました。
野菜や果物に含有されるミリセチンやケルセチンなどのフラボノイドや、ブドウ、ピーナッツに多く含有されるレスベラトロールの阻害作用も強いようなので食事からの摂取による有効性を期待してしまいます。
でも多くのフラボノイド類は消化吸収を経て、その大部分がグルクロン酸や硫酸抱合体として体内を移動するとのことなので、これらグルクロニドやサルフェートのMpro阻害作用にも興味を持ちました。
大豆にはダイゼイン等のイソフラボンの他に、新型コロナウイルスのレセプターであるヒト細胞のACE2と結合し阻害作用3)を示すニコチアナミンも多いことから、新型コロナウイルスのヒト細胞への感染を予防する可能性もあるので、日本人が良く食べる大豆加工食品に予防効果があればいいなと思っています。
参考)
1)Lei Sun et al.:
In vivo structural characterization of the SARS-CoV-2 RNA genome identifies
host proteins vulnerable to repurposed drugs., Cell, 184, 1-19 (2021)
2)Thi Thanh Hanh
Nguyen et al.: The Inhibitory Effects of Plant Derivate Polyphenols on the Main
Protease of SARS Coronavirus 2 and Their Structure-Activity Relationship.,
molecules, 26, 1924 (2021)
3)Saori Takahashi
et al.: Nicotianamine is a novel angiotensin-converting enzyme 2 inhibitor in
soybean., Biomedical Research 36(3), 219-224(2015).